東京発バイオテック革命――「細胞農業」が食の未来を塗り替える | NETOKYO
培養肉・細胞農業をめぐる世界と日本の動向を、公開情報をもとにまとめた編集記事です。 · NETOKYO Editorial
動物を飼育・屠畜する従来の畜産に代わり、細胞を培養して食肉を作る「培養肉(cultured meat)」の研究開発が世界で進んでいる。日本でも研究機関・スタートアップによる取り組みが続いており、東京発の企業もこの分野に参入している。
培養肉・細胞農業とは何か
培養肉とは、動物の筋肉細胞を採取し、栄養液の中で細胞分裂・増殖させることで食肉と同様の組織を作る技術である。「細胞農業(cellular agriculture)」はこれをさらに広く捉えた概念で、食肉に限らず、乳タンパク質や卵白タンパク質、皮革の代替素材なども、動物を直接飼育せずに細胞や微生物の培養によって生産する取り組み全般を指す。従来型畜産に比べて、土地・水の使用量や温室効果ガス排出量を削減できる可能性があるとして注目されている。
世界初の承認はシンガポールから
培養肉の食品としての販売を世界で初めて承認したのはシンガポールである。2020年12月、シンガポール食品庁(SFA)が米国企業イート・ジャスト社の培養鶏肉の販売を承認し、世界初の商業販売が実現した。以後、米国でも複数の企業の培養肉が食品として承認されるなど、規制当局による承認は各国で徐々に進んでいる。
日本の研究開発の現状
日本国内でも培養肉・細胞農業分野への参入企業が存在する。2015年設立のインテグリカルチャー社は、独自の細胞培養システム「CulNet」を開発し、コスト面での実用化を目指す研究を続けている企業として知られる。日本の食品・化学メーカーの中にも、細胞培養技術や培地(細胞を育てる栄養液)の開発に取り組む企業があり、大学の研究室と連携した基礎研究も進められている。

大阪・関西万博と培養肉
2025年に開催された大阪・関西万博では、培養肉をはじめとする先端フードテックの展示・試食提供が話題を呼んだ。万博という場を通じて一般消費者が培養肉に触れる機会が設けられたことは、日本国内での認知度向上に一定の影響を与えたとされている。
- → 従来型畜産に比べた土地・水資源の使用量削減の可能性
- → 温室効果ガス排出量の削減が期待される点
- → 感染症リスクの低減(家畜由来の人獣共通感染症対策)
- → 食肉需要の増加に対する供給手段の多様化
実用化に向けた課題
培養肉の実用化には複数の課題が残る。第一に生産コストの高さで、培養液(血清代替品を含む)のコスト削減が各社共通の技術課題とされる。第二に規制面での整備で、各国の食品安全当局がどのような基準で培養肉を承認するかは国ごとに異なり、日本国内での販売承認の枠組みも整備途上にある。第三に消費者受容性で、「培養された肉」に対する心理的な抵抗感をどう解消するかも実用化の鍵になるとされる。
よくある質問
- 培養肉はどこで初めて販売されましたか?
- 2020年12月にシンガポールで、米国イート・ジャスト社の培養鶏肉が世界で初めて食品として販売承認されました。
- 日本の培養肉開発企業にはどんなところがありますか?
- 2015年設立のインテグリカルチャー社が独自の細胞培養システムを開発する企業として知られています。
- 培養肉は日本で購入できますか?
- 国・時期により規制状況が異なるため、最新の販売承認状況は各国の食品安全当局の発表をご確認ください。
