25億円マンションと「潤日」――東京不動産価格、過去最高の裏側
不動産経済研究所の公式プレスリリース等をもとにまとめた編集記事です。 · NETOKYO Editorial
25億円。2025年に東京で成約したマンションの最高額だ。「Brillia Tower乃木坂」と「クラッシィタワー新宿御苑」、専有面積176〜211平方メートルの2物件が並んでこの金額をつけた。不動産経済研究所の統計によれば、2025年度の東京23区新築マンション平均価格は1億3,784万円、前年度比18.5%の上昇で過去最高を更新した。
公式統計が示す数字
不動産経済研究所が2026年4月20日に発表した2025年度(2025年4月〜2026年3月)首都圏新築分譲マンション市場動向によれば、東京23区の発売戸数は7,708戸(前年度比6.8%減)、平均価格1億3,784万円(18.5%アップ)、平方メートル単価214.3万円(20.9%アップ)。3年度連続で1億円台となり、二ケタの上昇率も続いている。
首都圏全体で見ると、発売戸数は21,659戸(2.6%減、1973年度の調査開始以来最少)、平均価格9,383万円(15.3%アップ、5年連続で最高値更新)。都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)に限れば、2025年の平均価格は1億9,503万円、平方メートル単価287.9万円に達し、これはバブル期の1990年(2億1,678万円)に迫る水準とされる。ちなみに1990年の史上最高値は2億2,662万円だった。初月契約率は62.9%(前年度66.8%から3.9ポイント低下)、3年連続で70%を割り込んでおり、価格上昇に需要が追いついていない兆候も同時に表れている。
1973年からの供給戸数、その推移
不動産経済研究所が2023年11月にまとめた「全国マンション市場50年史」によれば、首都圏の供給戸数は1973年の37,382戸から始まり、2000年に95,635戸で史上最多を記録した。その後はリーマンショックを経て2008年に43,733戸まで急落、2020年には27,132戸まで縮小している。2025年度の21,659戸は、ピーク時の4分の1以下という水準だ。供給が細るほど希少性が増し、価格が押し上げられるという単純な構図が、半世紀にわたるデータではっきりと見て取れる。

億ションが5,669戸、前年比55.4%増
2025年(暦年)の供給のうち、1億円以上のマンションは4,334戸、2億円以上は1,044戸、3億円以上は291戸に上る。1億円以上の「億ション」全体では5,669戸となり、前年比55.4%という急増を記録した。冒頭で触れた最高額25億円の2物件は、この億ション市場のさらに頂点に位置する。
年収1,213万円「パワーカップル」という買い手
では実際に誰がこの価格帯を買っているのか。SUUMOジャーナルの調査によれば、首都圏新築マンション購入者の平均世帯年収は1,213万円(前年比+84万円)、年収1,200万円以上の世帯が32.7%を占める。共働き比率は62.3%(既婚世帯では78.2%)で、「年収1,200万円以上の既婚共働き」=いわゆる「パワーカップル」が43.7%に上る。購入動機として「資産として有利」を挙げた層が36.7%で初めてトップになったことも見逃せない。実需よりも資産防衛としての側面が、購入理由の中で強まっている。
リクルートの別の調査では「買い時だと思っていた」という回答が49%で3年連続の増加。その理由の最多は「これから住宅価格が上昇しそう」(46%、新築マンション検討者では59%)だった。価格高騰そのものが「今のうちに買わなければ」という焦りを生み、それがさらなる需要を呼び込むという循環が起きている。
栃木へ移住した夫婦、家賃9万円から月3万円の返済へ
価格高騰の裏側では、都心を離れる選択をする人たちもいる。IT企業に勤める30代の男性と、時短事務職の30代の妻(世帯年収約480万円)は、東京近郊で家賃9万円の賃貸に暮らしていたが、栃木県へ移住し、築22年・敷地100坪の戸建てをリフォーム込み1,000万円強で購入した。ローンの返済は月3万円台。「満員電車、保育園送迎で毎日いっぱいいっぱい」だった生活は、「気持ちに余裕ができた」「娘とミニトマトを植える」生活に変わったという。自治体の移住支援制度も活用したこのケースは、都心一極集中とは正反対の選択肢が現実的になりつつあることを示している。
「去る中国人と買う台湾人」
国土交通省が2025年に行った調査(2018年1月〜2025年6月、3大都市圏および4市の不動産登記約55万戸を分析)によれば、東京23区の新築マンションのうち海外居住者が取得した比率は3.5%、都心6区に限れば7.5%に達した。区別では新宿区が14.6%で最も高い。国・地域別では台湾が192戸(全体の6割超)でトップとなり、中国の30戸を大きく上回った。
この逆転には理由がある。2025年10月16日に施行された経営・管理ビザの厳格化(資本金要件の引き上げ・雇用基準の強化)により、中国人向け不動産仲介業者は「昨年10月以降、問い合わせがめっきり減り、成約が月10件以上から3〜5件に激減した」と証言している。中間層(5,000万〜2億円)が最も打撃を受けた一方、富裕層は価格上昇そのものへの慎重姿勢を強めているという。「去る中国人と買う台湾人」という対比が、この1年の東京不動産市場のもう一つの顔を映し出している。
「潤日」という移住現象
それでも東京の不動産を選ぶ中国人富裕層は存在する。金融投資系企業に勤める30代の男性は、コロナ後に中国から移住し、約60平方メートルの都心タワーマンション(日本人が手放した中古)を「2億円近い額」で購入した。大手金融機関から2億円近い住宅ローンを単独で借り入れたという。移住の動機として本人が挙げたのは「風水的にいい」立地評価、「3〜4時間で帰国できる」利便性、「政治が安定していて治安も良い」「欧米のような人種差別が少ない」という点だった。
中国語には海外移住ブームを指す「潤(ルン)」、日本移住を指す「潤日(ルンリィー)」という言葉がある。在留中国人は2025年6月時点で全国90万人を超えており、この静かな移住の流れが東京の不動産価格を下支えする一因になっている。

金融庁が発した異例の警告
価格上昇が続く中、警戒のシグナルも出始めている。金融庁は2026年2月、地方銀行の不動産向け融資の増加に対して異例の警告を発した。住まいサーフィンの沖有人氏はこれを市場過熱の警戒シグナルと位置づけ、「相場は下がるときに緩やかにではなく、想定以上に早く空気が変わる」と警鐘を鳴らす。「今買ったら10年後大きく下落するのでは」という会員の不安の声を受け、同社は独自の「マンション10年後予測」ツールをリリースした経緯もある。不動産経済研究所の担当者も「売れ残りが出ており、値下げをしているケースもある」と郊外エリアの変調を指摘しており、都心一極集中と郊外の格差は今後さらに拡大するとの見立てを示している。
中古市場にも異変が起きている。2026年1月の中古マンション成約平方メートル単価は86.99万円で、バブル期最高だった1990年9月の85.50万円を35年ぶりに突破した。ただし在庫平方メートル単価(105.15万円、前年比+31.5%)と成約平方メートル単価(86.99万円、+6.3%)の差は約18万円まで拡大しており、売り手の期待価格と買い手の実勢価格の乖離が実需の限界を示唆している。東京23区の成約件数は前年比-2.4%に転じ、千葉県は首都圏で唯一価格が前年割れするなど、地域間の明暗も分かれ始めている。
バブル期を超えた価格、8割で済む返済負担
ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、2023年の首都圏新築マンション平均価格8,101万円は、バブル期最高だった1990年の6,123万円を32.3%上回っている。ドル換算でも1990年の42.23万ドルに対し2023年は57.66万ドルで過去最高だ。一方で住宅ローンの返済負担は、低金利の恩恵によりバブル期の8割程度に軽減されているという。「価格はバブル超え、負担感はバブル未満」という逆説的な構図がここにある。
ただし不動産経済研究所自身が注記しているように、バブル期は現在ほどタワーマンションが普及しておらず、首都圏全体に占める東京23区のシェアも18%程度に過ぎなかった。単純な価格の比較には、こうした商品構成の違いへの留保が必要だ。
よくある質問
- 2025年度の東京23区新築マンション平均価格はいくらですか?
- 1億3,784万円で、前年度比18.5%の上昇となり過去最高を更新しました。
- 海外居住者の購入で最も多い国・地域はどこですか?
- 台湾が192戸(全体の6割超)でトップとなり、中国(30戸)を大きく上回っています。
- なぜマンション供給が減っているのですか?
- 2025年度の首都圏供給戸数は21,659戸で、1973年の統計開始以来最少の水準です。建設コストの高騰などが要因とされています。
