47.8万票が選んだ「酷暑日」――その言葉が生まれた年、東京はまだ知らない

気象庁公式発表・東京消防庁統計等をもとにまとめた編集記事です。  ·  NETOKYO Editorial

47万8,296票。これは新しい気象用語を決めるために気象庁が実施したアンケートの総回答数だ。2026年4月17日、気象庁は最高気温40度以上の日を指す新用語「酷暑日」の採用を正式発表した。だが皮肉なことに、この用語が生まれた2026年の東京は、まだ一度もその「酷暑日」を経験していない。

47.8万票が選んだ「酷暑日」

気象庁は「夏日」(25度以上)「真夏日」(30度以上)「猛暑日」(35度以上)という既存の区分だけでは、40度級の危険な暑さを十分に伝えられなくなったとして、2026年2月27日から3月29日にかけて新用語を決めるアンケートを実施した。専門家の意見を踏まえて選ばれた候補の中から、最多得票となったのが「酷暑日」で20万2,954票(得票率約42.4%)。2位の「超猛暑日」(6万5,896票)を大きく引き離しての採用だった。

新用語誕生の年、東京はまだ酷暑日を知らない

ところが気象庁の観測データを確認すると、意外な事実が浮かび上がる。2026年7月の東京(大手町)で35度以上を記録したのは6日間のみで、最高気温は7月25日の37.1度。8月も最高は8月1日の36.5度にとどまり、40度には一度も到達していない。皮肉にも「酷暑日」という言葉が生まれた初年度の東京は、その言葉が指す暑さをまだ経験していないことになる。

一方で全国では既に酷暑日が現実のものになっている。2026年7月21日、岐阜県多治見市など3地点で全国初の酷暑日を観測。東海地方では7月21日から25日にかけて5日連続で酷暑日を記録するという、観測史上初めての現象も起きた。全国の猛暑日はのべ4,727日(8月4日時点累計)で、2010年以降では2025年の6,144日に次ぐ2番目の多さだった。「新語ができた年に、東京はまだそれを知らないが、記録は目前に迫っている」という構図が、2026年の夏を象徴している。

強い日差しの都市の風景
2026年夏、気象庁は最高気温40度以上を指す「酷暑日」という新用語を導入した

大手町の観測史上、猛暑日23日という記録

東京・大手町の観測史上、最も暑かった日は2004年7月20日の39.5度。次いで1994年8月3日の39.1度、2018年7月23日の39.0度と続く(1923年9月2日の45.2度は関東大震災に伴う大規模火災という特殊事情下の記録で、公式統計には算入されない)。

猛暑日の年間日数で見ると、2025年8月27日に東京・大手町は猛暑日23日目を記録し、1875年の統計開始以降の年間最多記録を更新した。2025年夏(6〜8月)の内訳は猛暑日25日(平年差プラス20.5日)、真夏日69日(平年差プラス26.0日)、夜間も気温が下がらない「熱帯夜」に相当する夜間高温日は45日(平年差プラス28.8日)。JBpress の分析では、2006年7月の猛暑日はわずか2日だったのに対し2026年7月は9日、20年前と比べて7日増加し、最高気温の平均も20年前比でプラス3.1度になっているという。

熱中症搬送9,125人、過去最多を更新

東京消防庁管内の統計によれば、2025年6〜9月の熱中症による救急搬送人員は9,125人で過去最多を記録した(前年の7,996人を上回る)。月別では8月が3,304人で過去5年最多、9月も844人で過去最多。年代別では80歳代が2,065人で最も多く、65歳以上が全体の52%以上を占める。重症度別では中等症以上が約4割の3,596人、死亡も1人確認された。発生場所は住宅等居住場所が36.0%、道路・交通施設等が34.9%だった。

全国では総務省消防庁の週次速報によれば、2026年7月13〜19日の熱中症搬送が今年初めて1万人を超え、7月20〜26日には1万8,591人に達している。都道府県別では大阪府(1,041人)、愛知県(797人)に次いで東京都が783人と3番目に多かった。

都の対策予算―70億円の事業から打ち水まで

東京都は具体的な予算を伴う暑さ対策を次々と打ち出している。「熱中症・ヒートアイランド対策推進事業」では区市町村向け補助を拡充し、2030年度までの5年間で総事業費70億円を投じる。2026年4月には中小企業向けの「暑さに配慮した職場環境づくり奨励金」を新設し、1社あたり20万円を年4回の募集で計1,000社に交付する。水道料金では基本料金を4カ月間無償化し、口径13ミリで3,784円、20ミリで5,148円などを申請不要で自動免除する異例の措置も取られた。

都市デザインの面では「東京ストリート+」として道路空間を再編し、日陰と賑わいを生む取り組みに予算3億円を投じ22路線を選定。夏の風物詩「打ち水大作戦2026」では、東京都下水道局が2026年7月23日から9月30日にかけて、都内各地のイベントに再生水を無償提供している。クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)は気候変動適応法に基づき区市町村が指定する仕組みで、2026年8月5日時点で全国1,410市区町村が指定済みだ。

電力予備率0.9%という綱渡り

猛暑への対応で見過ごせないのが電力供給の実態だ。経済産業省は2026年5月20日、「10年に1度の猛暑」を想定しても安定供給に最低限必要な予備率3%を確保できる見通しが立ったとして、節電要請を3年連続で見送ることを発表した。

しかし資源エネルギー庁が2025年10月31日に公表した速報値によれば、東京エリアの最小予備率(10年に1度の厳気象想定)は7月が2.1%、8月にいたってはわずか0.9%と、安定供給の目安である3%を大幅に下回っていた。大型火力発電所(約200万キロワット)の長期補修停止による供給力減少と需要増が重なり、需給バランスが約400万キロワット相当悪化したことが主因とされる。政府は3年ぶりとなる追加供給力公募を実施し、約120万キロワット規模の電源を確保することで、この綱渡りの状況をしのいだ。「節電要請見送り」という安心を伝える見出しの裏に、東京エリアだけは1%を切る予備率という際どい実態があったことになる。

夏の電力インフラのイメージ
東京エリアの電力予備率は2026年8月、想定上わずか0.9%まで低下していた

「温暖化がなければ確率0.006%」

東京大学大気海洋研究所の渡部雅浩教授らが共同代表を務める極端気象アトリビューションセンター(WAC)は、2026年7月中旬から下旬にかけての西日本の猛暑をイベント・アトリビューション手法で分析した。その結論は、「人為的な温暖化がなければ、同程度の高温が発生する確率はわずか0.006%」というものだった。つまり、地球温暖化という要因を除けば、ほぼ起こり得なかった現象だという評価だ。2025年には日本国内で「危険な高温」を経験した人口が世界で9.5億人に上り、東京の気温も平年を約3度上回ったとされている。

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よくある質問

「酷暑日」とはどんな用語ですか?
気象庁が2026年4月17日に採用した、最高気温40度以上の日を指す新しい気象用語です。約47.8万票のアンケートで決まりました。
2026年の東京は酷暑日を記録しましたか?
いいえ。2026年7月・8月とも東京・大手町の最高気温は37度台にとどまり、40度には到達していません。
なぜ節電要請が見送られたのに東京の電力は綱渡りだったのですか?
全国では予備率3%を確保できる見通しが立った一方、東京エリア単体では8月の想定予備率が0.9%まで落ち込んでいたためです。
Future Tokyo酷暑日気候変動

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